〔080〕北 岳  (3,192m)
〔081〕間ノ岳
(3,189m)

標高差:1,672m

2004年08月08日(当時55歳)



山梨県芦安村
  前夜、広河原駐車場に着いた時には大雨で明日の登頂は無理に思えた。 起きてみると嘘の様な晴天、慌てて仕度して5時20分の遅い出発となってしまう。

  大きな吊り橋を渡り広河原山荘の横から登山道は始まる。 吊り橋付近からは北岳の山頂が望める。 昨日の大雨の影響か、大樺沢(おおかんばさわ)の流水はゴォーゴォーと大きな音を立てて濁流となっている、迫力がある。 登山道にも水が流れ防水の効いた登山靴でないと難儀しそう。 幸い何度か渡渉する橋は流されておらず一部の沢渡りを除いて苦労するところはなかった。

  7時13分、約2時間を要して肩ノ小屋への分岐点となる。 間ノ岳を先に登りたいので迷わず大樺沢を直進する、沢道からは終止、北岳の山容が見えており、どんどん近づいてくる。 分岐点を過ぎた辺りから登山道は薄くなり沢中を歩くようになり斜度もきつくなってくる。 北岳のバットレスにはクライマーが3人張り付いているが見ている間はほとんど進んでいない。

  3時間20分で八本歯ノコルへの取り付きとなり、梯子の連続する急斜面になる。 3時間45分で八本歯ノコルに着く、急登に息が切れて休憩ばかりとなる。 八本歯ノコルの尾根筋でも急登と梯子が続き、4時間20分で北岳、北岳小屋への分岐に着き、トラバース道へ進む。 トラバース道は崖っぷちに鉄梯子を儲けただけのスリル満点な道であり、オトギリソウを始め沢山の花が咲いていた。

  10時10分、4時間50分で北岳山荘に着く。 登りのきつさから予定以上に時間をとられてしまったので北岳山荘に泊まろうかとも思ったが、便所の匂いが周囲に充満しており、ここに泊まるのは見送った。 ガスがどんどん上がってきて見る間に景観が得られなくなってきた。

  北岳山荘から尾根道を登り、5時間30分で中白峰山(3,055m)に着く、下山者からここの裏斜面に雷鳥が居ると聞いたので、一緒に登ってきたおねーちゃんと見に行く。 親鳥が2匹、子供が4匹程ピヨピヨと鳴いていた、初めて見る雷鳥に感激。
11時48分、6時間30分で間ノ岳山頂に着く、ガスって何も見えない。

  昼飯を食ってから北岳山荘に引き返し(やはり臭い)、北岳へ直登する。 かなりの急斜面で疲れた足にはかなり堪えた。2時10分、8時間50分で北岳山頂に着く、ここもガスで何も見えない、山で何も見えなければ登った値打ちはないと思っている。 肩ノ小屋側に降りるが足はよろけているし、今にも雨が降りそうな天気となる。 時間も時間だし4時間の下りは辛いので日帰り登山を諦めて肩ノ小屋に泊まろうと思ったが、小屋に近づくにしたがって学生の騒ぎ声が聞こえ出したので急に泊まりは嫌になり、下り終えることにする。

  肩ノ小屋から1時間も歩けば雨が振り出し、泊まりを止めた作戦失敗が悔やまれる。夏山の天気は午前中10時までは晴れて昼からガスるのが毎日のことらしい、展望を得るには小屋泊まりが必須と言っていた。
沢に降りる右俣コースは一面のお花畑であるが折り返し道となっている為に距離がやたらと長い、地図でみる距離より4倍はありそうな感じ。 この時間になってもカッパを着てどんどん登ってくる、幾ら良いカッパでも登りで汗を掻けば中から濡れてしまい着ていないのと同様と思う、安物で充分か。

  沢に下りてから日が暮れるまでに帰り着きたいと思うが、足が前に進んでくれない、牛歩で歩き続け6時15分、全行程13時間で駐車場に帰り着く

六甲山全縦走56kmを含めても最長の山歩き時間となってしまった。
これを機会に本題の”楽して登る百名山”に戻ろうと思う。
広河原への交通
夜叉神〜広河原:マイカー乗り入れ禁止、市営バス、タクシーのみ
奈良田〜広河原:時間制限規制
上り方向− 4:00〜10:00、13:00〜14:00、18:00〜19:00
下り方向−11:00〜12:00、15:00〜17:00、20:00〜21:00

北岳、間ノ岳、仙丈ヶ岳、甲斐駒ケ岳の前線基地になると思っていたが、上記交通規制により山を降りてからの温泉にも入れず、食料の買出しは
43km離れた早川まで走る必要があり、時間制限の為にうまく帰れない可能性大であった。
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今回の間ノ岳、北岳のコーズ、クリックで拡大します。
広河原の駐車場、全体ではこの4倍程の広さがある。
左端はトイレであるが結構汚かった。
広河原から見た朝日を浴びる北岳。
早朝は雲ひとつない良い天気だったが・・・
よく揺れる長い吊り橋を渡ると登山道が始まる。
昨日の大雨の影響か、登山道の大半には水が流れており沢歩きの様相。
登山靴なら濡れる心配はなかった。
ゴォーゴォーと音を立てて流れる ”大樺沢”沿いの登山道には
5箇所以上の渡渉があり、水量が多くスリル満点であった。
”肩ノ小屋”への分岐点を過ぎた辺りから ”大樺沢”と ”北岳”山頂を見る。
沢道を歩いている間の大半は ”北岳”が正面に望めた。
更に進むと ”バットレス”(意味が判らない)の側面に出る。
振り返り見た ”鳳凰三山”。 この時間は逆光なので後でゆっくり
写真を撮るつもりだったのだが、下山時はガスってしまって何も
見えない状態になってしまった。 山の写真は撮れる時に撮れ。
の鉄則を改めて思い知らされた。
”八本歯のコル”の下側になると道らしい道はなくなり
沢沿いに登って行くのみ。 この高度でも沢水は流れていた。
北海道の ”イワブクロ”に
良く似た ”ホタルブクロ
よく見ると ”バットレス”に2組のクライマー、計3名が張り付いていた。
見ている間では、まったく進んでいなかった。
”八本歯ノコル”への取り付きに着く。
ここを登り切れば ”八本歯ノコル”となる。
”八本歯ノコル”から見た ”北岳”山頂方向。
急登は更に続いている。
人懐っこい ”イワヒバリ”を結構見掛けた。
4時間20分にて ”北岳”と ”北岳山荘”との分岐に着く。
大樺沢から低レベルのデッドヒートを繰り返してきたあんちゃんは、
ここから直接 ”北岳”に登るらしい。

本日のハイライトである ”北岳山荘”への デンジャラスな ”トラバース路”に入る。
簡単な梯子、手摺りは ”大丈夫かいな? の状態であるが、この道を築いた人は偉いと思う。
不毛の地に見えた岩壁に結構沢山のお花が咲いていたのにも感激した。

トラバース路から見た ”北岳山荘”。
”間ノ岳”方向にはガスが出てきた。
”北岳山荘”近くから見た ”仙丈ヶ岳”の優勢。
この後はガスが出てきて ”仙丈ヶ岳”の山姿はこれが見納めとなった。
”北岳山荘”から ”間ノ岳”までは尾根筋は
標高3千mを超える ”天空の縦走路”となる。
”中白峰山”付近で見られた ”ライチョウ”の親子。
矢印に3匹居るが保護色で見付け難い。
中白峰山”からの登山道を見る。 実際には ”天空の縦走路”と
呼べない程にアプダウンがあるが、比較的楽な登山道ではあった。
再び ”イワヒバリ”。
逃げないのでシャッターを押してしまう。
6時間30分で ”間ノ岳”(3,189m)に着く
どこから来たのか学生風の若者が沢山休憩していた。
”タカネシオガマ”は本当に綺麗な花だった。
トウヤクリンドウ”は、花が開いているのを
見たことない。
イワベンケイ”の仲間、結構地味であるが
感じが ”カランコエ”に似ているた。
鳥にかじられた ”イワギキョウ”
”北岳山荘”に戻り ”分岐”から ”北岳”を目指す。
ガスで景色が見えないので、何度も出て来るピークに山頂か?
と騙される。
8時間50分を要して ”北岳”(3,192m)に着く。
一応、日本百名山2山のピークハントは達成したが、我が信条で景色の見られなかった
日本百名山は登り直しすると決めているので、後日、再び登りに来る必要がある。
北岳の ”バットレス”の全容。
”北岳”の山頂、”肩ノ小屋”はバットレスに阻られてここからは見えていない。
間ノ岳〜北岳日帰り
  1泊を覚悟していた間ノ岳、北岳であったが、諸般の事情で日帰りとなってしまった。 長い下山時途中では雨も降り出し、足は思うように動かなくなってしまった。 牛歩で進み何とか日暮れまでには下山することが出来たが、全行工程13時間は流石に堪えた。
間ノ岳  深田久弥著の「日本百名山」から
  『甲斐国志』の指す三峰がいずれにせよ、白峰三山は現在の北岳・間ノ岳・農鳥岳であることに間違いはない。 ただ私にとってやや惜しく思われるのは、農鳥という山の名を間ノ岳のために取っておいて欲しかったことである。
北岳 深田久弥著の「日本百名山」から
  この北岳の高潔な気品は、本当に山を見ることの好きな人だけが知っていよう。 白峰三山の中でも、
北岳は形がスッキリしていて、清秀な高士のおもかげがある。(略)惚れ惚れするくらい高等な美しさである。 富士山の大通俗に対して、こちらは哲人的である。
現在、この情報は古過ぎる。 自車で広河原には入れない。
ピークハントは果たせたが、残念ながらガスで何も見えない。
これで済んだ訳ではなく、直ぐに引き返してもう一つの目的である ”北岳”に向う。
下山は ”肩ノ小屋”側とするが、ガスで何も見えなかったので、
これ以後の写真は撮っていない。
日本百名山』登り始めの天気は最高であったが、山頂ではガスに覆われてしまった。
  常々、山登りのどこが面白いのか疑問を持ちながら、今回の様なしんどいことをすると、もう止めようと思ってしまう。 しかし下山してしまうと次の計画が頭の隅に芽生えてくる。 歳も歳だし、いつまでも貧乏性と言っておらず、今後は優雅に山小屋泊まりのゆっくり山登りをして行きたいと思うが、便所の臭さと団体さんの騒ぎ声に我慢できるかどうか?、それに温泉に入れないのが辛いが、山小屋でビールをキューと呑むのは憧れではある。
後日、北岳、間ノ岳の晴れた日のリベンジを達成している。
  7年後になるが、2011年10月10日〜11日に農鳥岳を加えた ”白峰三山”を晴れた展望の得られる日に縦走している。
幸い、簡単な木製橋は流されておらず、無事に渡渉を終わらせることが出来た。
見上げる斜面には木製階段が整備されていた。
疲れ切った表情のあんちゃんと比べると、
まだおいらの方が元気そうだ。
”北岳山荘”から ”北岳”へ登る分岐に着く。
ガスがどんどん上がって来て晴れ間が無くなってしまった。
4時間50分にて ”北岳山荘に着くが ”間ノ岳”へ急ぐために、
ここは通り過ぎる。 小屋から離れていてもトイレからの強烈な
悪臭が漂って来た。 完全にオーバーユースなのだろう。
山頂にはガスで何も見えないのに多くのハイカーが休憩していた。
”天空の縦走路”最初のピークである ”中白根山”の山頂を見る。
”中白根山”から ”間ノ岳”までが標高3千mを超える尾根道となる。
”中白根山”(3,055m)の標柱には ”中白根”(3,052m)と書かれていた。
気にしなければどうでも良い話ではあるが・・・
縦走路から ”右俣沢”方向を見ると、奇妙な羅列の岩峰が見られた。
先程登って来た ”天空の縦走路”を ”北岳山荘”に向けて戻って行く。
今回の間ノ岳、北岳登頂の簡易鳥瞰図。
2023年12月24日改定